女として愛に生き、犯した罪からも逃げずに生きる瀬戸内寂聴
瀬戸内 寂聴(せとうち じゃくちょう)
1922年5月15日生まれ。彼女は20代に結婚・出産を経験するも夫の教え子に恋愛感情が芽生え、夫と娘をおいて家を出ていくことになりました。その後、小説家として不倫の恋愛小説『夏の終り』で女流文学賞を受賞し、現在は尼僧として著書『寂聴 般若心経』や法話を行っています。
画像引用元:Wikipedia
執筆を「切に打ち込み」、男性を「切に愛する」情熱的な前半生
90歳を過ぎた今も尚、絶大な人気を誇る作家・瀬戸内寂聴。著作物もさることながら、彼女の生きた情熱的な人生もまた、人々の心を惹きつけています。その彼女がよく表現する言葉で「切に」というものがあります。
この「切に」というのは、「目の前のものに対して、ただひたすらに、わき目もふらず」という意味です。「集中力」をはるかに超えたこの「切に」は、寂聴の人生の最大のテーマだそうです。
作家への夢が諦めきれず、夫と娘を捨てて文筆修行に「切に」励み、成功後も仕事に「切に」打ち込む。そして、その過程で多くの男性と恋愛関係を持ち、周りからどんな非難を浴びようとも、その1人1人を「切に」愛していました。何かを得るために大切なものを失う覚悟を持って挑んだ彼女の人生は「切に生きる」人生でした。
一見すると、欲望のままに生きているようにも思えますが、彼女は欲望を叶えるために多くの犠牲を伴ってきました。大切なものを全て失う覚悟を決めてまで目標を実現しようとする人はそう多くないでしょう。「何かを得るためには何かを失う」ということを覚悟し、見えない道を切り開き続けながら前半生を歩んできたのです。
犯した罪から一生逃げない、贖罪のような人生
50歳を過ぎた寂聴は仏門に入り、前半生で貫いた「欲」を洗い流す人生を始めました。出家後も執筆や講演活動を続け、笑顔と愛に満ちた姿に、今でもファンが増え続けています。そして、彼女が発する説得力ある言葉は、多くの人々を救い続けています。
この力の源は「情熱的に生きたゆえに犯してしまった前半生の罪から、決して逃げない」という決意から生まれています。彼女は「仏門に入って、これだけ修行し、人々のためにも尽くしたのだから、何もかも許される」という気持ちを抱くことはありません。一生罪を背負い続けて生きるという強い決意が、人々の心に響かせる言葉を生み出しているのです。
この世に間違いを犯さない人間はいません。しかし、「間違いをなかったことにして、ごまかす人」は少なくありません。ごまかす行為を許すことのない瀬戸内寂聴だからこそ、人の痛みに心の底から寄り添い、理解して向き合えるのです。
【思うこと】間違いや過ちに向き合う
私達にとって大事なことは起きてしまった間違いにどう対応するかを考えることです。起こってしまった間違いはやり直すことができません。焦る気持ち、周りからの非難があったとしても冷静になるように自分に言い聞かせ、「何もかもを諦める」のではなく、どうすれば間違いに対して向き合うことができるのかを考えていくことでより良い人生を生きることができるのではないでしょうか。